2012年11月 7日
#303 仲宗根 健太 SOS10人目 『7人制=フィットネスやブレイクダウンで強みを/15人制ステップを切って低い態勢で勝負』
セブンズ日本代表に選ばれ、ワールドカップ・セブンズ出場を目指す仲宗根健太選手。7人制と15人制の違いや共通点、そしてそれぞれの目標について聞きました。(取材日:10月23日)
◆成長を実感出来ている
—— 男子7人制日本代表に選ばれ合宿に参加中、調子はどうですか?
前回のアジアセブンズシリーズのムンバイセブンズでは香港に負けてしまい2位という結果でしたが、チーム全体が意欲的に練習に取り組めていて、僕もスピード面やフィジカル面で成長している実感があるので、毎日が楽しいですね。
次の大会はワールドカップ・セブンズ2013のアジア地区予選を兼ねたシンガポールセブンズという大会で、10月22日から28日までその大会に向けての選考合宿をしています。この合宿には14人の選手が参加していて、その中の13人がシンガポールに行き、更にその中の12人がメンバーに入れるんです。サントリーからは僕の他に成田(秀悦)さんも合宿に参加しています。
—— 合宿ではどんなスケジュールで練習をしているんですか?
朝の6時から1時間半ほどグラウンドで練習をして、その後は10時から1時間半、15時から1時間半というスケジュールで練習をしています。それぞれの練習内容は、細かなところでは違いますが、だいたいフィットネストレーニングやブレイクダウンのセッション、アタックの時のセッションをやったりしています。合宿に参加しているのが14人で、休む暇もなく1時間半ずっと練習しっぱなしという感じです。
—— ムンバイセブンズではどうでしたか?
出場時間は全体の半分くらいで、まだまだ活躍したとは言えない状態だと思います。ポジションは一応フッカーをやらせてもらっていて、2つトライを取りました。
—— 7人制と15人制の一番の違いは何ですか?
スペースが広いので、1人1人が勝負出来るところだと思います。サントリーでのフィットネストレーニングのおかげで、成田さんも僕も、他の合宿メンバーよりは走れるという感触があります。
—— 次のシンガポールセブンズでの目標は?
ワールドカップ予選も兼ねているので、ワールドカップに出場出来るように優勝を目指したいと思います。(※シンガポールセブンズの上位3チームがアジア代表としてワールドカップ・セブンズ2013に出場)
香港が一番のライバル国だと思っています。今までアジアセブンズシリーズは3戦行われていて、第1戦のマレーシアで行われたボルネオセブンズでは香港に勝って、第2戦の上海セブンズは遠征が中止となり、第3戦のムンバイセブンズでは香港に負けてしまいました。
—— 7人制の面白さはどこですか?
初めて7人制の代表に選ばれて、実際に7人制をやる前までは、「自分は向いていないんじゃないか」って思っていたんですが、自分の強みを出せるところが多くあると感じています。
7人制の選手はスピードがあって、1対1で勝負して抜いていくような選手だと思っていたんですが、今の7人制日本代表のスタイルは、たくさんブレイクダウンを作って、相手よりも走り勝ってトライを取るというスタイルなので、フィットネスやブレイクダウンスキルの部分で自分の強みを出していけると思います。
—— 第16回アジア競技大会(2010/広州)の7人制ラグビーで金メダルと取ったメンバーである成田選手からアドバイスはありましたか?
毎回の練習で「もっとこうした方が良い」と、個人的にもアドバイスしてくれますし、成田さんは今のチームの中で最年長ということもあり、引っ張ってくれています。
—— 今の代表メンバーとも慣れましたか?
8月からずっと今のメンバーでやっているので、一体感があります。
—— 4年後のリオデジャネイロオリンピックでは7人制ラグビーが正式種目となりますが、オリンピック出場についてはどう考えていますか?
出来れば出場してみたいですが。けれど、僕はまだサントリーでトップリーグの試合に出ていないので、4年後の目標よりも、まずはサントリーで試合に出ることが一番の目標です。その中でセブンズに参加していますが、今成長を実感出来ているので、この成長を15人制に活かしたいという気持ちが強いです。7人制をやったことで、スピードやハンドリングスキル、ボールをもらってからの動きなどが成長していて、それは15人制にも活かせると思っています。
今はまだオリンピックというよりも、今のメンバーの中で先発の7人に入ってグラウンドに立ちたいという思いがあり、その延長線上でオリンピックにも繋がっていくのかなって思っています。
—— 7人制代表の監督は、元東芝の監督であった瀬川智広監督ですが、サントリーのトレーニング方法とは違いますか?
休む人がいなくて、シャープにトレーニングするという部分は、サントリーと一緒だと思います。
◆悔しい思いで意識が変わりました
—— 15人制の話をしましょう。学生ラグビーと社会人ラグビーでは違いますか?
変わり過ぎて何を言えばいいか迷いますが(笑)、1人1人のラグビーに対する意識が一番の違いだと感じます。僕は一応、慶應大学でキャプテンをやらせてもらい、いろいろな選手を見てきましたが、チーム全員が勝利に向かって自らハードワークしているということは、学生時代にはありませんでした。
大学の時は部員が150人いて、その全員を1つの目標に向かわせることが難しいことでした。社会人でラグビーをすることを望んでサントリーに入ってきた選手ばかりなので、ラグビーに対する思いは学生とは全然違いますし、練習に対する意識も違うと感じています。
—— 大学時代はキャプテンとして150人全員を見るんですか?
僕1人では150人全員を見ることは出来ないので、4年生全員で引っ張っていました。ラグビー部の中でもシニアチームとジュニアチームに分かれていて、シニアチームのリーダーは僕で、ジュニアチームにもリーダーがいて、ジュニアチームのリーダーとコミュニケーションを取りながらやっていました。慶應大学はAチームからEチームに分かれていて、C以下をジュニアチームと呼んでいます。
—— サントリーには学生時代にキャプテンをやってきた選手が大勢いますが、キャプテン経験者同士で話が合うということはありますか?
普段あまりキャプテン経験者という意識で話をしたことはないですね。けれど、今は真壁さんがキャプテンをやっていますが、皆さんキャプテンシーがあると思います。僕はまだまだ発言などが出来ていないので、ダメなんですが(笑)。
—— 大学時代で一番印象に残っていることは何ですか?
僕は3年生の時になかなか試合に出られず、悔しい思いをしたことで、ラグビーに対する意識が変わりました。何をするにしても、ラグビーのためになることをやろうと考え、練習前の準備や1つ1つの練習に対する意識が変わりました。食事でも油ものを控えたりもしました。
あと、1ヶ月間ずっと山中湖周辺にこもって合宿をしたことが印象に残っています。1年生の時は雑用もあり、合宿最初の3日間は衝撃的で、これを1ヶ月間も出来るのかと不安になりました。練習前と合間にグラウンドを片づけたり、次の練習の準備をしたりしていて、夜は寝る時間はあるんですが、4年生もいるので、気を遣って小さくなりながら寝ていました(笑)。
学年が上がれば雑用もなくなるんですが、大変さはどの学年でも一緒でした。今のサントリーの練習と比べると、サントリーの練習は短い時間で集中して、内容の濃い練習をしているんですが、学生の時は練習時間が長かったので、そういった部分で違う大変さがありました。
—— 大学時代のポジションはどこですか?
大学時代はセンターをやっていました。サントリーに入ってフランカーをやっているんですが、最初は違和感しかありませんでした(笑)。僕はもともとトライアウトを受けてサントリーに入ることが出来たんですが、その時にフランカーに挑戦してみないかと言われました。
—— もともとフランカーもやっていたんですか?
フランカーはやったことがありませんでした。フランカーをやってみて、接点が多いですし、フォワードのポジションをやること自体初めてで、表現が難しいんですが、ずっと動いているような感じで、楽しいと思いました。
—— センターに対する未練はありませんか?
よく聞かれるんですが、未練はなくて、今の自分の状況の中で頑張ろうと思っています。
—— センターをやっていた時は、どこにラグビーの面白さを感じていましたか?
全身でタックルをすることが好きだったので、そこはフランカーになっても変わらない部分です。アタックの時はスタイルが変わりますが、ボールを持つ回数は、近場ですが、増えたので、そこはフランカーの方が面白いですね。
◆友達と仲良くなった
—— 出身は?
生まれは神奈川県川崎市です。
—— 自分の性格はどんな性格だと思いますか?
自分で言うのも変ですが、真面目かもしれないですね(笑)。あとはあまり感情を表に出さないかもしれません。
—— いつからラグビーを始めましたか?
小学3年生の時に父親の勧めで、田園ラグビースクールというところでラグビーを始めました。そこから中学校では、ラグビー部のある学校に行きたかったので、桐蔭学園に行きました。
—— ラグビーを続けようと考えたのはいつ頃ですか?
小学校の時はサッカーもやっていて、最初は嫌々ながらラグビーに連れて行かれていたんですが、小学校5年生くらいからはラグビーを続けようと思っていました。ラグビーを続けようと思ったのは、ラグビーを一緒にやっていた友達と仲良くなったことが大きかったと思います。
—— お父さんもラグビーをやられていたんですか?
専修大学でラグビーをやっていました。大阪工大高校(現 常翔学園高校)の時には、高校日本代表にも選ばれていました。
—— 兄弟は?
妹が1人います。だから、僕がラグビーをやることになったんだと思いますが、そこまで無理やりという・・・いや無理やりでしたね(笑)。
—— ラグビーを始めた当初はサッカーの方が面白かったんですか?
ずっとサッカーをやりたいと言っていたんですが、ラグビーを一緒にやっている友達と仲良くなってからはラグビーが好きになりました。当時は体が大きい方で、足も速い方だったので、ラインブレイクも出来て気持ちいいと感じて、ラグビーにはまっていきました。
—— 高校はどこに進んだんですか?
高校はそのまま桐蔭学園です。
—— 中学、高校とラグビーで印象に残っていることはありますか?
高校時代は花園に3年間出場することが出来て、1年生の時は準優勝、2年と3年の時はベスト4でした。中学時代は、東日本大会という大会があり、そこでの優勝という目標は一応ありましたが、高校時代の花園での優勝という目標とは違っていました。花園で優勝するという目標に向かって、チーム全員で頑張っていました。
花園では3年連続で優勝校に負けてしまいました。ラグビー部全員が仲良くて、先輩たちを優勝させてあげたいと思って頑張っていたんですが、毎年悔しい思いをしたまま終わってしまいました。
—— 中学、高校時代もキャプテンをやっていたんですか?
キャプテンでした。人がいなかったから僕がやっていたという部分もあると思います。。
—— キャプテンをやっていて大変なことは何ですか?
大学の時は人が多すぎて、全員を1つの方向に向かせることが難しかったですね。辛いことがあると、全員が悪いところばかりを言い始めてしまうんです。その中で、4年生だけでも同じ方向を向いてリーダーシップを持って、チーム全体に波及させていこうと考え取り組んでいました。
4年生だけでも30~40人いるので、同じ方向に向かせるのは大変でした。4年生だけのミーティングをかなりの回数行ったと思います。特に4年生だけのミーティングの時は、隠すことなく思ったことは全部話し合おうと決めていました。もともと仲の良い学年だったので、話しやすい環境ではあったと思います。
—— 大学は慶應大学ですが、なぜ慶應大学に行こうと思ったんですか?
1つ上の先輩が3人、2つ上の先輩も3人が慶應大学に行っていて、先輩から学業のラグビーもしっかりやるという話を聞いて、慶應大学に行きたいと思いました。
◆チャレンジ出来る環境がある
—— サントリーでのラグビーの面白さは何ですか?
お手本になる選手がたくさんいて、毎日毎日勉強出来るところですね。他のポジションもそうですが、フランカーにも素晴らしい選手がたくさんいて、チャレンジ出来る環境があると思います。大学3年生の時も試合に出られず悔しい思いをして、そこからチャレンジして成長出来たので、その時の気持ちを持って今を過ごせているというのは、これからどうなるか分かりませんが、自分の成長に繋がると思っています。
—— 試合に出られそうだという感触はありますか?
正直なところまだまだですね。フランカーとしての動きは一通り覚えることが出来ましたが、フォワードとしてのラインアウトやスクラムに関しては経験がないので、まだまだ練習中という感じです。
—— サテライトや練習試合でフランカーとして出場して、その時の出来はどうでしたか?
最近は、近場のディフェンスなどでは手応えを感じていますし、フランカーでバックスの動きが出来るというのが僕の強みでもあると思うので、スタンドからボールを受けてカットインして接点を作ることとか、ハーフからのフェーズだとか、そこの面でも手応えを掴めています。
フォワードの中では体が大きい方ではないので、ディフェンスに対して真正面からぶつかりに行かず、しっかりとステップを切って低い態勢で勝負しようと思っています。
—— 今シーズンの目標は何ですか?
まずはトップリーグの試合に出ることです。長期的な目標としては、日本代表に入りたいという思いがあります。これまでは高校日本代表とU20の日本代表、そして今回7人制の代表には入りました。
—— 試合に出た時にはどういったところを見て欲しいですか?
ボールキャリアーになった時に、これだけ体が小さくても、ステップを踏んだり態勢を低くしたりと工夫をして前に進めるというところを見て欲しいです。7人制だとバックスの選手が多いので、ブレイクダウンでも優位に立てるんですが、15人制だと体が大きい選手がたくさんいるので、まだまだトレーニングが必要だと思います。その中で、僕は体が小さいので、速く入って低くポジショニングすることを意識してやっていきたいと思います。
—— お父さんは試合の応援に来てくれますか?
応援には来てくれます。「もっとこうしろ」というアドバイスはないんですが、毎回母親も一緒に見に来てくれいます。
—— SOSについては、どう考えていますか?
今のサントリーはベテランの方が多く試合に出ている状況で、若手の僕らがもっともっと成長しなければいけないと思います。チーム全体の約40%が若手メンバーなので、僕らが頑張らなければ、これからのサントリーはないという危機感を持っています。1年1年が勝負という気持ちでやっていきたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]